結い相続支援センター

相続問題の事例

相続問題のトラブル事例

はじめに

相続トラブルが起こりやすい方チェックリスト
以下の事柄に3つ以上当てはまる方は、遺言書の作成等、何らかの生前対策が必要です。専門家に早めに相談をすることをお薦めします。

  • 子供達兄弟仲が悪い
  • 次男に、教育費や結婚資金等、長男よりも多くのお金をかけていた
  • 子供のうち1人が海外で生活している
  • 長男の素行が悪く、相続させたくない
  • 障害のある子供に、他の子供よりも多くの財産を残したい
  • 子供の年齢差が大きい
  • 妻との間に子供がいない
  • 離婚後に再婚したが、先妻に子供がいる
  • 先妻との子供のほかに、後妻に子供がいる
  • 妻との間の子供のほかに未認知の子供がいる
  • 財産は、家と土地、わずかな預貯金しかない
  • 収益不動産(アパート等)を持っていて、死後も賃料収入がある
  • 非上場会社を経営し、親族が後継者である
  • 長男でない子供(長女等)と同居中
  • 長男の嫁に介護してもらっている
  • 美術品、骨董品、宝石等の高価な品がある
  • 親族内に本家と分家のこだわりがある
  • 2パターンの遺言書を残したい

相続問題のトラブル事例

離婚トラブル1

生前父親が、生前相続対策で自宅を長男に贈与していた。数年後、長男が両親よりも先に亡くなった。長男の嫁と姑の仲が良くなかったので、相続の後、自宅に住んでいた姑を嫁が追い出した。

相続は順番に発生するとは限りません。人生は地震と同じで想定外の「まさか」が発生します。上の例では、長男が亡くなったら長男嫁と子供に渡り、奥様の手元に返ってきません。住んでいる家と老後資金は奥様に残すようにしておきましょう。

離婚トラブル2

子供がいない新婚カップルが、親の援助でマンションを購入した。主人が交通事故で亡くなり、嫁は、姑に「援助した1,000万円を返してほしい」と言われた。

最近は晩婚化で子供のいない世帯が増えています。子供がいれば話は別ですが、「新婚で子供がいない」状態で万が一のことがあると、法律上は、亡くなった方の配偶者に2/3、両親に1/3の相続権があります。預金を引出したり解約するだけでも、相続人である両親の実印が必要になります。義両親との間には厳しい現実がある事を知っておくべきです。

認知症トラブル

父はアパートとマンションを3軒所有している。過日認知症と診断され、「法定後見制度」を勧められたので、家庭裁判所で長男を後見人に選定してもらった。この度、700万円程かけて、古くなったマンションの大規模修繕をしようとしたが、後見制度で必要とされている家裁の許可がおりずに困っている。

成年後見は家庭裁判所の所管です。裁判所の本来業務は裁判ですが、成年後見制度は監督義務が家裁に残ります。事件が年々増え続け、「成年後見制度」そのものが制度疲労の状態に陥っています。この事例のように「本人の財産を守る」ことに重きをおき、大きな支出を伴う案件の認可が出ない状況が数多く報告されています。
一方、高齢化の進展に伴い、認知症の方も年々増加し、2025年には700万人を超え、65歳以上の高齢者の方の5人に1人が認知症になるという予測もあります。人生にも賞味期限があります。遅くても75歳までに遺言書の作成や家族信託等の手続をして、後で慌てることがないよう早めに準備しましょう。「備えあれば憂いなし」です。

税務調査が引き金となったトラブル

父が亡くなり2年半程たった頃、突然税務調査が入った。調査官が2人来て2日間程調査をした後、1,500万円程度申告もれがあったことが判明し追徴金をとられた。相続手続は長男主導で行ったので、他の兄弟は長男が意図的に財産を隠していたのではないかと不信感をもった。
数年後に母が亡くなって二次相続が発生した時、遺産分割をめぐって3人の兄弟それぞれが権利を主張し、結局裁判に持ち込まれてしまった。

親が生きている間は子供は親の言うことを聞きますが、二次相続では調整する親がいなくなりますし、また、いくら仲の良い兄弟でも嫁が絡んでくると話が複雑になってしまいます。この事例のように、税務調査で多額の申告もれが発覚すると、大抵はもう一人の親が亡くなった時の分割の際にトラブルにつながってしまいます。申告する際には、名義預金の有無、宝石・貴金属、書画骨董等の申告も忘れないようにしましょう。また、遺言書を書く際には、個別に記載しなかった「その他の財産」についても、受領者の指定を入れておくことを忘れないようにしましょう。

重加算税トラブル

郵便局に預けてある定期貯金や割引債券はバレないと思い、申告しなかった。税務調査が入って申告漏れを指摘され、通常の追徴税に加えて多額の重加算税を支払うことになった。

被相続人が亡くなると、住所地近くの金融機関や、事業所近くの金融機関に、家族全員名義を含めて、税務署長から各金融機関に残高の照会がなされます。事前に入手した銀行等の資料と提出された申告書の内容をチェックし、疑義のある案件に税務調査が入る事が一般的ですから、相続税調査の80%強が修正申告に応じています。
税務調査当日の調査官は「財産の管理をしていた人は誰か?」を確認にきています。隠し口座が発見された場合、管理していた人に質問回答書を取るようになりましたので、曖昧な回答は厳禁です。重課加算税は調査官にとって金星です。一方、納税者にとっては、払うべき税金が35%も上乗せされてしまうので注意しましょう。
ベテランの税理士は税務調査の実態を知っていますので、隠し事のないように事前に相談すると心配せずにすみます。
「税務調査は忘れた頃にやってくる」のです。

事業承継トラブル

会社を経営する創業者の父が亡くなり、株式を兄弟妹3人で分割して相続した。数年して、海外に住む妹から株の買取請求があった。株価を計算すると1億円以上となっていたので拒否したら、裁判所に訴訟を起こされた。結局、買取資金捻出のために、会社を売却 (M&A) せざるをえなくなった。

会社を経営されている方の「争族」は、会社存続そのものを危うくしてしまう事態になります。最近の事例では大塚家具、ロッテのお家騒動がそれです。事業をされている方で内部留保が多くなっている方は特に要注意です。
最近、種類株を使った手法や遺言信託を使った手法等、有効なスキームがありますので、元気なうちに事業承継専門の税理士に相談しましょう。